鎌倉のオーバーツーリズムを解決する、循環型観光という選択肢「観光客、多いな…」鎌倉の週末は安定の混雑です。鎌倉に住んでいる方なら、この息苦しさを実感しているはずです。ところが。お隣の三浦半島に目を向けると、まったく違う状況があります。横須賀市や三浦市では人口減少が止まらない。「観光客にも来てほしいのに来ない」という悩みを抱えています。鎌倉は観光客で溢れすぎ、横須賀・三浦は観光客が来ない。同じ三浦半島周辺で生まれているこの対照的な状況を解決するヒントを教えてくれたのは、思慮深く活動的な、お坊さんでした。お寺の副住職が取り組む、新しい観光のかたち鎌倉のシェアリビングスペースNIHO kamakuraで定期的に開かれるリジェネラティブ・ツーリズム作戦会議、vol.9の今回に登壇したのは、横須賀市・浄楽寺の副住職、土川憲弥さん。お寺の副住職が、なぜ観光の話を?と思うかもしれません。土川さんはとっても大活躍な方なのです!土川さんは、浄楽寺の副住職でありながら、一般社団法人武士道文化協会(通称B文協)の代表理事も務めています。B文協は、三浦半島の武家文化を軸とした地域活性化に取り組む団体。寺社仏閣、歴史遺産、自然、食文化など、三浦半島に眠る多様な文化資源を掘り起こし、それらを「文化観光」という形で活かそうとしています。「お寺だけでなく、地域全体が元気にならないと意味がない。そのためには、観光のあり方そのものを変える必要があります」そんな想いで、地域全体の観光にも取り組んでいるというわけです。土川さんが提唱するのは、人が来れば良いという「マス」のための観光ではなく、地域の本質的な魅力を理解してくれる「ファン」のための観光。そして、鎌倉と三浦半島全体を一つの文化圏として捉え、広域で連携する新しい観光のあり方。この新しい観光のあり方に向けて、具体的な取り組みや展望が語られました!三浦半島の「色」ってなんだろう?土川さんの最初の問いかけは、これまでの観光で語られるものと少し違っていました。「三浦半島は、どんな色だと思いますか?」「色」? 初めての視点です。土川さんの言う「(街の)色」とは、その土地に長い時間をかけて積み重ねられてきた歴史、文化、自然、人々の営みなど、目に見えるものから見えないものまで含めた総体を指す概念です。「観光というのは、『光を観る』と書きます。観光とは、地域の魅力に光を当てることだと考えています」つまり、地域にはそれぞれ固有の魅力、「色」がある。でも、その色は暗闇の中では見えません。そこに意識をして「光」を当てることで初めて、その色が明るみに出る。観光とは、新しくゼロから何かを作ることではなく、すでにその地域が持っている色を見出し、光を当て、魅力を浮かび上がらせる行為なのです。土川さんの言う「文化観光」の大事な姿勢をまず教えてもらいました。では、三浦半島にはどんな「色」があるのでしょうか。緑は「山・川の自然文化」で、大楠山をはじめとする豊かな自然。黄色は「歴史文化」で、特に源頼朝、三浦一族から始まる武家文化と、幕末・明治期の横須賀の近代化の歴史。紫は「信仰の文化」で、寺社仏閣、霊場巡り、祈りの伝統など精神文化。オレンジは「アートや芸術文化」で、葉山の御用邸文化、逗子の石原裕次郎など文化人との関わり。でも、重要なのはここから。これら六つの色は単独で存在するのではなく、互いに重なり合い、影響し合っているということです。「例えば、私が勤める浄楽寺の運慶仏は、和田義盛の祈りによって生まれ、その背景には武士の生き方があり、寺の周辺には豊かな自然が広がっています。一つの場所や体験の中に複数の色が重層的に存在することで、深みのある観光体験が生まれます」と土川さんは説明します。色の重なり合うところに、その地域の独自な魅力がある。でも従来の三浦の観光は、そうなっていなかったと言います。武家文化を加えた「三本の矢」戦略「三浦半島には、海の魅力と食の魅力があります」神奈川県の観光指針「三浦半島魅力最大化プロジェクト」では、そう謳っています。確かに三崎マグロは美味しいし、海も綺麗。でも、土川さんはこれだけでは不十分だと指摘します。「美味しい食べ物や美しい自然は、日本全国どこにでもあります。それだけでは他の地域と差別化できず、『なぜここに来るべきなのか』という問いに答えられません」色の重なりが弱いのです。他の地域と同じ色しか見出せていないのです。そこで土川さんが重視するのは、3つ目の色としての歴史文化です。この3つの色を重ねるために、「三本の矢の文化観光戦略」と呼んでいます。一番目の矢は三浦半島の「自然文化」、二番目の矢が三浦半島の「食文化」、そして三番目が三浦半島の「鎌倉武家文化」。「最初の二つは確かに素晴らしいですが、日本全国どこにでもある。でも、ここに三番目の武家文化が加わることで、日本全体で見ても唯一無二のものに変わります」と土川さんは力を込めます。海で獲れる魚も、武士が戦のない時は漁師を兼ねていたという歴史と結びつく。山の自然も、三浦一族の城跡や古戦場という歴史の舞台となる。確かに、これは他の地域にはない組み合わせです。豊かな自然や食の文化と、鎌倉〜三浦の歴史文化をうまく結びつけるために、土川さんは「武家文化800年構想」という形で歴史を整理しています。源平合戦から幕府終焉まで、合わせて800年という時間軸で三浦半島の歴史文化を捉える試みです。源頼朝と三浦一族に始まり、日露戦争で活躍した東郷平八郎の時代まで、実は日本史の武家文化における重要な転換点の多くは三浦半島と関わっているんです。「武家文化を体感するなら、三浦半島。」このように整理すれば、三浦半島は日本全国でも唯一無二の観光地になる。そうした独自の魅力=色を見つけるのが出発点です。循環型観光とファン化という新しいモデルここからが、話の核心です。土川さんは、観光のあり方そのものを変える必要があると訴えます。「一昔前の観光は、とにかく人を集めることが目標でした。大勢の観光客で賑わっている状態が『良い観光』でしたよね。でも、コロナ以降、この考え方は大きく変わりました」薄い接触で大量の人を集めるという量重視の観光から、価値を共有できる人を迎える質重視の観光へ。旅は単なる消費から関係構築へ、集客から共感を作ることへと変化していると言います。「重要なのは人の数ではなく、その土地を好きで来てくれる人を増やすこと。人の密集した道を歩くのが楽しいわけではありませんよね。その土地を味わいながら歩きたいのです。」鎌倉の現状を考えると、本当に納得できる話です。ファンとは誰かでは、「ファン」とはどんな人でしょうか。 土川さんは、ファンを明確に定義しています。「『行ってみようかな』と初めて来てくれた人はまだファンではありません。『また来ました』と何度も訪れる人、『家族を連れてきました』『友人を連れてきました』と大切な人を紹介してくれる人、『この場所を友人に勧めたいです』と積極的に広めてくれる人。こうした人たちが真のファンです」あなたがまた行きたいと思う地域はありますか? 家族や友人を連れて行きたいと思った場所は?そんな場所があなたが「ファン」となっている地域なんです。ファン化がもたらす七つの効果土川さんは、ファン化によって生まれる効果を七つ挙げました。まず第一に、リピート。ファンになると、何度でもその場所を訪れたくなります。「そこに行くことが自分にとっての喜び」となり、「第二の家」とも呼ばれる感覚が生まれます。第二に、紹介。これが重要なポイントです。ファンは、自分が好きな場所を人に伝えたいという強い欲求を持ちます。しかも興味深いことに、ファンが紹介する人は良い人が多いのです。「なぜなら、自分が好きな場所に来てほしいのは、自分が好きな人だからです。自分が嫌いなタイプの人や、好きな場所を汚すような人には来てほしくないですよね。だから、ファンが紹介する人は、同じように場所を大切にしてくれる可能性が高いんです。」質の高い来訪者が自然に集まる仕組みになっています。第三に、滞在時間の増加。ファンはその場所の複数の要素が好きなため、一つ一つをじっくり体験したいと思います。急いで回って次の場所へ移動するのではなく、その場所に浸り、ゆっくり味わう。滞在時間が自然と増えていきます。第四に、単価の向上。「好きという感情が経済に変換されます。地域側としても、無理に売り込む必要はない。好きな人たちが来たら、好きなものをただ売るだけで良い」本物の価値をそのまま伝えるだけで、ファンは喜んでお金を使ってくれる。無理なく収益が上がる仕組みです。第五に、地域へのコミット。これも興味深い効果です。ファンになると、その地域が続いていくこと、良くなっていくことを真剣に考えるようになります。ごみを捨てないどころか、むしろごみを拾ってくれる。地域の課題が見えた時、「私もそれを解決したい」と思ってくれる。第六に、文化の保護・継承。ファンは、一つ一つの物事に対する背景や物語を大切にします。この好きなものを未来につなげていくことが、自分にとって重要な使命だと感じるようになる。誰かに頼まれなくても、自発的に文化の保護や継承に関わろうとします。第七に、人と人の温かいつながり。ファンは、同じくファンである人とつながりたいという欲求を持ちます。実際にその場所で顔を見て、生きた交流を持つことに高い価値を見出してくれます。匿名性の高い大量観光では生まれない、温かく深い人間関係が、ファン化によって実現します。循環型観光モデル独自の魅力を決めた上で、それに価値を見出すファンを増やす。それを実現するためのモデルを、土川さんは循環型観光モデルと呼んでいます。旅行者がその土地の文化を学び、「いいな」と思って地域に接続する。接続してより深めていくために、体験を行う。体験を通じて「この地域いいな」と感じると、地域に還元する行動を取る。そして、「あそこに行くとこんなに良いことがあるよ」と人に伝えてくれる。その人自身も再び来るし、紹介された友達も来るようになる。これが循環です。「この循環型観光モデルの重要な点は、大量に人を誘客しなくても地域が豊かになるということです。好きな人たちで溢れるリピーターの形を取ると、無理に新規顧客を獲得し続ける必要がなくなりますから」そして、この循環型観光モデルを実現するためには、文化観光の推進が不可欠だと土川さんは強調します。表面的な観光資源の消費ではなく、その土地の文化、歴史、自然、人々の営みなど、深い部分に触れる体験を提供することで、初めてファンが生まれます。大楠地区での実践―理論を形にする「理論はわかった。でも、実際にどうやるの?」そう思いますよね。土川さんは、こうした理論を実際に大楠地区で実践しています。大楠観光協会では現在、大楠山という三浦半島最高峰の山を中心とした「大楠循環プロジェクト」を進めています。「大楠観光協会は、観光を『外から来る』ことだけとは考えていません。観光の語源である『光を観る』という意味を重視し、地域の魅力に光を当てることこそが観光だと考えています」観光客だけでなく地域の住民も、この地域の魅力を知り、一緒に育てる循環を作り出すことを意識しています。「大楠は「何もない」と言われます。でも、何もないところには、自然があるんです。この自然そのものを価値として捉えています。」子どもたちが作る観光資源具体的な実践の1つ目は、大楠小学校の子どもたちと進めている「木札×QR×植物図鑑」プロジェクトです。子どもたちと一緒に大楠山に登り、「この木は何だろうね」というところから始めます。木の名前、役割、昔の人がどう使っていたか、どんな虫が集まるか、どんな鳥が好むか、季節ごとの変化。「すると、ただの大楠山が、木や土の集合体であることを子どもたちは知ります。自分が興味を持った木について、子どもたちが木札をデザインします。さらに中学生が、小学生がリサーチした情報をもとに、より詳しい植物図鑑をWebページとして作成する。そのQRコードを小学生が作った木札につけることで、訪問者は木の情報を楽しく学べる仕組みです」ここからが大事なところです。このプロジェクトの重要な意義は、子どもたちが観光資源づくりに参加することにあります。「子どもが自分の地域の魅力を知らなければ、その土地の次世代はありません。子どもたちに地域への魅力を感じてもらい、大人になった時に『自分たちの土地はこんなに良いところだよ』と語れるようになることで、彼らが観光のアンバサダーになっていきます」子どもたちも「こんな人に来てほしい」「こんな人には来てほしくない」ということを考えるようになり、来てほしい人に声をかけて地域を紹介するようになる。住民が観光を育て、「我が街へようこそ」というウェルカムの精神が育まれるわけです。エコミュージアムという考え方もう一つの取り組みが、エコミュージアムというプロジェクトです。エコミュージアムとは、地域そのものを博物館と捉える考え方。大楠山そのものを展示物にしようというプロジェクトで、山頂にかつてあった菜の花畑を復活させようとしています。「これを子どもたちと地域の人たちと一緒に進めます。そうすると、地域の人が大楠山に登り、季節ごとの花、草、虫、鳥を見て、自分たちも豊かになっていく。好きな場所になり、大楠山への関係人口を増やしていくことを目指しています」エコミュージアムの考え方では、「開発しない観光」が重要。そのもの、それそのものを素晴らしいと伝えることで観光を進める。その地が好きな人たちが集まるので、どうすれば良くなるかを考えてくれる。暮らしと観光がつながる地域を実現し、観光公害を防ぎながら分散型の観光を可能にする。これがエコミュージアムの考え方です。寺院を拠点とした文化観光の実践そして、土川さんがお坊さんとして文化観光をより深く実践しているのが、浄楽寺を拠点とした様々な文化観光コンテンツです。浄楽寺には、鎌倉時代の武将・和田義盛夫妻の発願により造像された、運慶作の国指定重要文化財の仏像が5体安置されています。運慶といえば、鎌倉時代を代表する仏師。その本物が、ここにあることを生かして多様な取り組みを進めています。三浦半島初の宿坊「テンプルステイ観」神奈川県の事業採択を受けて進めてきた宿坊プロジェクトが、2023年11月29日にグランドオープンした「TEMPLE STAY 〜観(KAN)〜」です。この宿のコンセプトは、三浦半島のDNAとしての武家文化と地域文化を体験する場所。「武士の生き方を体験する宿」です。そのために3つのポイントを置いています。第一に「武家文化としての内観」。限りある命の中で何ができるのかを真剣に考え、自分と向き合った武士たち、特に和田義盛のような武士は、自らの心の内側を見ることで自分自身を解放していました。「本当は何を求めているのか」を内観する、その「観」を体感します。第二に「食文化の体験」。浜浅葉日記や「ひしお」という鎌倉時代の調味料など、昔からこの地に色濃く残ってきた食文化を、宿に泊まると食すことができます。第三に「自然文化の体験」。麓にある温泉や、地元の人にしか知らない自然スポットを、この拠点から紹介する。このようにして、鎌倉武家文化を体験できる宿施設として運営しているんです。巷によくある単なる宿坊の何手も先をいく実践です。その上で、宿だけに閉じない仕組みにさらに展開しています。地域丸ごとホテル構想それが「地域丸ごとホテル」という構想です。これは、宿泊施設だけでなく、地域の食堂がレストランになったり、お寺がレセプションやコンシェルジュになったり、体験が他の場所で行われたりと、地域の中で一つのホテルを作るという考え方です。この構想は、神奈川県が推進しているもので、元はイタリアの「アルベルゴ・ディフーゾ」という観光モデルです。なぜイタリアで成功したかというと、地域の人々がその土地のDNAを共感しているからです。「イタリアの観光は、ローマ3,000年、キリスト2,000年という大きな基盤の上にすべてが成り立っています。イタリアの人々はそれを理解し共感している。だから、民家に泊まっても、地域で食事をしても、何を体験しても、すべて同じ考え方・感覚で行われ、その地でしかできないものになるんです」三浦半島も、武家の聖地、武家800年の歴史というコンセプトで考えると、三浦半島全体がアルベルゴ・ディフーゾのように、同じコンセプトで連続した形で、みんなが共通の意識で同じ価値観を提供できる場所になります。「お寺を中心にすると、普段から檀家を通じて地域の様々な人々とつながっているため、お寺を起点に紹介することで地域内での経済が生まれます。お寺を中心とした文脈の中で地域を紹介すると、その地域で体験するすべてが唯一無二のものになっていきます」三浦半島観光の未来を描く土川さんは、これからの観光の方向性を五つのポイントにまとめています。第一に、ストーリーでつなぐこと。「なぜここにあるのか」を理由でつないでいきます。なぜここにあるのかには、必ず物語がある。それをつないでいくと、点と点が面になっていくんですね。第二に、体験の質を磨くこと。これが重要なポイントです。「日本は体験型観光が非常に苦手な気質がありますが、なぜかというと体験の魅力を地元の人がわかっていないから。『当たり前にそこにあるよね』というものが、実は体験になるのに、当たり前すぎて見えていない」暮らしも体験になる。自然の中も体験になる。私たちの日々の食卓も体験になる。「当たり前のものを体験化していくと、実はその土地が唯一無二のものになっていきます」第三に、面でつなげる観光圏。三浦半島というものを一つの文化圏として考えて、それぞれの魅力を同じコンセプトで考えることができると、文化観光としてより魅力的なものになっていける。面にした時に、その効果が爆発的に大きくなるそうです。第四に、暮らしと観光を近づけること。「観光公害の多くは、暮らしと観光のギャップの中に生まれています。みんながウェルカムな気持ちを持てるように、暮らしている人たちにとっても豊かになるような観光の仕組みを作っていく必要があります」。鎌倉住民にとって、これは切実な問題です。第五に、地域全体で価値を共有すること。「それぞれが別の価値観でやっていると、良さを100%伝えられません。地域全体で地域の学びを深めていく必要がある。外にどう発信するかではなく、内側の人たちがそれを勉強して学んでいくことで、実はその豊かさというものが武器になっていきます」土川氏は、「観光の本質は、土地にある色を見えるようにする仕事です」と語ります。無尽蔵に人をたくさん集めることではなく、その地域の色が好きな人たちを集めることにシフトしていくべきだと。「長い年月をかけてこの地に積み重ねられてきた色を、今の私たちも学び、次の世代にも伝え、来てくれた皆さんにもその価値をちゃんと提供していくことが、地域の住民や事業者の大きな役割だと考えています」鎌倉と三浦半島の連携に向けてイベントの質疑応答では、鎌倉と三浦半島の連携について活発な議論が行われました。「鎌倉に年間約1,500万人が来ていますが、鎌倉で終わっている人が大半だと思います。例えば鎌倉を入り口にして、葉山の森や三浦の豊かな自然など、もっと奥まで案内できる流れを作りたいと思いますが、どうしたらよいでしょうか?」これは大きな可能性があるテーマですが、土川さんは最大の課題として交通インフラを挙げます。「鎌倉から三浦への二次交通が不足しています。特に鎌倉から逗子を経て横須賀方面へ向かう際、山を越える必要がありますが、バス路線が限られている。観光用の二次交通が存在せず、地域住民の生活用バス路線を観光客も利用せざるを得ない。これにより、住民の移動手段が観光客によって圧迫され、観光公害の一因となっています」JRと京急という異なる事業者間の調整が必要となり、実現が難しい状況にあります。「鎌倉を起点にした観光用の二次交通を作ることができたら大きく変わるでしょう。浄楽寺まで人流を作ることができれば、そこからポンプのように三浦の方に押し出すこともできます」もう一つ重要なのが、鎌倉の役割です。「三浦半島全体が武家文化でつながっているという認識がまだ弱い。『武家文化800年という一つのコンセプトで一緒にやろう』と言っても、腑に落ちない人が多い。でも、それぞれの土地にそのDNAがあります」「鎌倉がコンシェルジュのような役割を持ち、『この地域一体は同じ文化圏です』と伝えてくれると、非常に分かりやすくなります。ここは頼朝の地だったので、鎌倉の人たちが三浦半島全体に流していく機能を持つと、三浦半島全体の観光のあり方や生活のあり方が変わってくると思います」鎌倉に来た観光客を、三浦半島全体に流す。それが、鎌倉の混雑も解消し、三浦半島全体も潤う、一石二鳥の解決策になるわけです。持続可能な観光の実現に向けて土川さんの話を聞いて印象的だったのは、一貫して「本物」にこだわっていることです。小手先のテクニックで観光客を集めるのではなく、地域に本当にある価値を丁寧に伝える。そして、その価値に共感してくれる人とじっくり関係を築いていく。こうした活動はまだ始まったばかりだと土川さんは言います。「三浦半島全体を一つのステージとして考えていますが、今は点でつながっている状態です。一番近い影響は大楠という自分たちの場所。ただ、一緒に関わることで、『へえ、そんなことあるんだね』と気づき始めている人たちがいて、点がどんどん増えています」浄楽寺の宿坊プロジェクトも、三浦半島初の試みです。「浄楽寺が宿坊でうまくいく図を見せ、大きな成果を見せられる形になると、『どうやってやるの』と信頼を得られます。今、お寺が収益事業者・非収益事業者として、どういう形で宿を作れるかというスキームを三社で構築しています。やりたいという人が出たら、この事業者を介して宿坊を作ったり、定款を変更して収益事業として進めたりできるスキームを作っています」点がつながって面になった時に、皆が活用できるビジネスモデルとして提案できるものを温めているそうです。鎌倉のオーバーツーリズムと、横須賀・三浦の人口減少。この対照的な課題を解決するカギは、三浦半島全体を武家文化という一つのコンセプトでつなぎ、大量誘客から質の高い関係構築型の観光へと転換すること。土川さんの実践は、その可能性を示しています!鎌倉の混雑に疲れたら、少し足を伸ばして三浦半島へ。そこには、また違った魅力が待っているかもしれません。浄楽寺にご興味が湧いた方は、ぜひ訪れてみてください☀️https://www.jorakuji-jodoshu.com/miura鎌倉流リジェネラティブ・ツーリズム作戦会議はこちらに詳細が乗っています✈️https://kamakura-regene.studio.site/