「鎌倉芸術館を運営する財団が、2〜3年で破綻するかもしれない」そんな話を聞いたことがある人はいるでしょうか?9月の鎌倉市議会の一般質問にて、加藤千華議員は文化振興、防災、環境保全、交通——4つのテーマの質疑を行いました。NIHOでは、会員の方々の活動がより広く伝わるように応援しています。今回は、NIHOにも所属いただいている加藤さんの議会活動を通じて見えてきた「街の今」をレポートします!1. 鎌倉芸術館の運営財団が、財政危機に陥っている!?加藤さんが議会で最初に取り上げたのは、鎌倉芸術館の経営状況についてでした。鎌倉芸術館といえば、大船駅から歩いて10分ほどの場所にある、市民にとって身近な文化施設ですよね。コンサートや演劇、市民向けの講座など、様々な催しが開かれています。その運営を担う財団の財政状況が、深刻だというのです。5年間で基本財産が60%も減少…加藤さんは、公開されている決算資料をもとに、具体的な数字を教えてくれました。「基本財産が令和2年度の3億円から、令和7年度の予算では1億3200万円までの減少が予定され、5年間で実に約60%の減少の見込みでございます。このペースが続けば、…、あと2年から3年で基本財産の枯渇の危険があります」("基本財産"とは、文化施設の大事な貯金といった意味です。)さらに、こう続けます。「鎌倉芸術館特別会計においては、令和6年度に約2800万円の累積赤字を抱えており、実質的に財団としては年間約6000万円規模の赤字構造となってしまっています」えっ、そんな大変なことになっていたの…?と思いますよね。なぜなのでしょうか?「指定管理料は、2017年度の水準で据え置かれているにもかかわらず、人件費は約30%、エネルギー資材費においては約20%上昇しており、実質的に約3000万円相当の予算削減となってしまっています」つまり、物価や人件費は上がり続けているのに、市から財団に支払われる「指定管理料」は8年前のまま据え置かれている——その構造的な問題を、加藤さんは数字で可視化したわけです。主催事業が7つから、たったの2つに…さらに深刻なのは、「鎌倉らしい文化事業」ができなくなりつつあること。「鎌倉市主催事業を開催すると、より収支が悪化するという構造的な問題があり、積極的な鎌倉に根づいた文化事業の展開が困難な状況にあります」「実際に鎌倉芸術館では、主催事業を令和6年度の7つから、今年度、令和7年度には僅か2つにまで絞り、赤字幅を圧縮せざるを得ない状況となってしまっています。しかし、それでもなお財政状況の改善は困難で、財団は2年から3年で破綻してしまう計算となっております」本来、地域に根差した文化事業を展開すべき施設が、それをやればやるほど赤字が膨らむ——皮肉な状況ですね… 加藤さんは、その現状の意味をこう語りました。「これは文化施設としての本来の機能を果たせないばかりか、財団そのものの存続が危ぶまれる深刻な事態と言えます。主催事業の大幅な削減は、市民の文化機会の減少につながり、地域の文化施設が本来果たすべき地域住民が文化を身近に感じられる機会の創出や、多様な主体による文化支援ネットワークの構築などという役割を果たせない状況に陥っています」市はどう答えたの?市側(能條共生共創部長)は、光熱水費や修繕費は指定管理料とは別に市が負担していること、利用料金改定のための条例改正を行ったこと、経費削減や収入増の協議を定期的に行っていることを説明しました。「近年の急激な物価や人件費の上昇が今後も続く場合、人件費のスライド制度の導入など、柔軟な指定管理料の変更の必要もあると考えており、本市における指定管理者制度の在り方の中で検討してまいりたい」松尾市長は、こう答えています。「鎌倉芸術館は本市の文化芸術の振興と市民の文化活動の拠点となる非常に大切な場所でありまして、安定的な運営と魅力的な事業の展開のための予算を確保する必要性は、十分認識をしているところです」「市としては、財団に運営努力を促しつつ、市も一緒になって指定管理者とともに知恵を出しながら、事業の効果を最大限高められるよう、必要な予算措置を行ってまいりたいと考えています」予算を増やすのか、利用料金を上げるのか、民間連携を強化するのか——鎌倉芸術館が街の文化拠点としてあり続けるために、どんなやり方があり得るでしょうか。良いアイディアが求められています。2. 文化財を「みんなで守る」仕組み、あるの?加藤さんが続いて取り上げたのは、文化財の防災対策についてです。鎌倉には、国宝や重要文化財をはじめとする貴重な文化財がたくさんありますよね。そのほとんどは、神社やお寺が所有・管理しています。「地震や津波に備えて、市内の文化財について鎌倉市はどんな防災対策をしているのか」——加藤さんはそんな問いを投げかけました。能登半島地震の現場を見てきたこの質問の背景には、加藤さん自身の体験があります。加藤さんは今年7月、石川県立歴史博物館で開催された特別展を実際に訪れたそうです。「令和6年1月1日に発生した能登半島地震では、石川県を中心に甚大な被害がもたらされ、多くの文化財も損壊、焼失の被害を受けました。しかし、その後の継続的な文化財レスキュー活動により、貴重な歴史資料が数多く救出されています」「被災した文化財が専門家や市民ボランティアの方々の協力によって救出され、適切な応急処置を施されて展示されている様子を目の当たりにし、文化財レスキューの重要性とそのために必要な事前の備えの大切さを痛感いたしました」「もちろん、人命救助が最優先であることは言うまでもありませんが、鎌倉のような多くの貴重な文化財を有する町だからこそ、災害への備えをより一層充実させる必要があると強く感じました」実際に現場を見てきた上での質問なんですね。鎌倉市の現状は市側(小林教育文化財部長)の答弁によると、鎌倉市では昭和47年から「鎌倉文化財防災連絡協議会」という組織があり、主に指定文化財建造物を所有する30の社寺等が参加しているそうです。国や県と連携しながら技術的な助言や補助金交付を行い、文化財所有者と日頃から連絡を密に取っているとのことでした。「平時から市民ボランティアを育てては?」その上で、加藤さんが提案したのは、もう一歩踏み込んだ内容でした。「長野市では台風により浸水した文書等の文化財歴史レスキューを博物館が、市民ボランティアを募って行っていた事例がありますが、鎌倉市でも災害時に同様の取組ができるよう進めてはいかがでしょうか」「災害発生後にボランティアを募集するだけではなく、平時から文化財保護に関心のある市民の方々を対象としたワークショップや講義会などを開催し、文化財の取扱いや応急処置に関する基礎的な知識を身につけていただくことで、実際に災害が発生したときに、より迅速で適切な文化財レスキューのサポート、展開ができると考えております」なるほど、災害が起きてから慌ててボランティアを募集するのではなく、普段から準備しておこうという発想ですね。市は「鎌倉にふさわしい市民との協力体制などについても研究してまいりたい」と、前向きな答弁をしました。もし鎌倉で大きな災害が起きたとき、街の文化財を守るために私たちに何ができるでしょうか?「文化財レスキューのボランティア講座があったら参加してみたい」「こんな仕組みがあったらいいのに」——そんな声が街から上がることも、一つの力になるかもしれません。3. 海とプラスチックと子供たち——企業と連携した環境教育3つ目に紹介するのは、環境保全の取り組みについてです。鎌倉は海のある街。加藤さんは、海洋プラスチック問題と子供たちへの環境教育について質問しました。「2050年には魚よりプラごみの方が多くなる」加藤さんは、今年大阪万博を訪れた際の印象をこう語りました。「特にブルーオーシャンドームというパビリオンでの展示が印象に残っています。プラスチックが自然分解されるまでの時間はおよそ400年、2050年には魚よりプラスチック廃棄物の量が多くなるなど、衝撃的な現実を目の当たりにしました」400年…!気が遠くなる数字ですね。「日本は領海と排他的経済水域を合わせると、国土の約12倍の広さを持ち、面積は世界第6位、海の体積で見ると世界4位を誇る海洋大国です。海に面し、自然豊かな鎌倉で育つ子供たちへの海の関心をより高めていただければと思っております」タカラトミーやホンダとコラボ!市側(加藤環境部長)からは、民間企業との連携による取り組みが紹介されました。今年9月21日:タカラトミーとの共催で「クリーンアップかまくら×黒ひげ危機一発」を由比ガ浜で開催。海賊風のTシャツを配布!11月9日:ホンダとの共催でビーチクリーンを実施。砂浜のプラごみを回収できるバギーの乗車体験も!令和6年度:さかなクンを講師に招いた子供向け環境事業を実施(125名参加)さかなクンが来たんですね…!子供たちもきっと楽しんだことでしょうね。加藤さんは、こうした民間連携の継続を求めました。「やはりビーチクリーンと言うと、参加される方々がなかなか固定化されてしまう中で、民間のコンテンツを利用した多くの方々への啓発活動は、積極的にこれからも継続してほしいと思っております」確かに、「ビーチクリーン」と聞くと意識の高い人だけが参加するイメージがありますが、「黒ひげ危機一発」とか「バギー乗車体験」とか言われると、ちょっと行ってみたくなりますよね。8市連携の環境イベントも計画中!さらに広域的な取り組みも進んでいます。市の答弁によると、来年度には横浜市や川崎市など8市が連携したポイント制の清掃イベントを各地で開催し、各市代表チームによる決勝大会を開催する計画があるそうです。子どもたちも参加が可能です。加藤さんは、こうした取り組みの意義をこう述べました。「主体的に環境問題に取り組み、自分にも何かできると気づいてもらえるような教育プログラムの充実が、この鎌倉においての大きな糧となり、今後社会に羽ばたく子供たちにとって、とても大切だと思います」海のある街・鎌倉で育つ子供たちに、どんな体験を届けられるといいでしょう?「うちの子も参加させたい」「こんな企画があったら面白そう」——そんなアイデアがあれば、ぜひ周りの人と話してみてください。街の声が、次の取り組みにつながっていくかもしれません。議会で何が話されているのか、知ってみよう今回の加藤議員の一般質問では、このほかにも、津波警報発表時の情報伝達の問題、備蓄食料の充実、路線バスの減便対策なども取り上げられました。質問の締めくくりで、加藤議員はこう述べています。「虫の目、鳥の目、魚の目という言葉がありますが、今目下起こっている課題の具体的な解決はスピーディーに虫の目で、未来に向けての中・長期的な投資や取組は俯瞰的な鳥の目で、そして世の中のトレンド、流れも踏まえた魚の目という、バランスの取れた観点から市民の皆さんへのサービス向上のため、引き続き御尽力をいただければと思います」---議会というと、少し遠い存在に感じる人もいるかもしれません。でも、そこで話されているのは、私たちが暮らす街の「今」と「これから」についてなんですよね。 鎌倉芸術館の運営財団が、実はかなり厳しい財政状況にあること文化財を災害から守る仕組みに、まだ課題があること海を守る取り組みが、企業や他都市と連携しながら進んでいることこうした「知らなかった事実」を知ることが、街に暮らす一人ひとりが「自分ごと」として考えるきっかけになるかもしれません。NIHOでは、これからも会員の方々の活動を通じて、街の動きをお伝えしていきます!---📋 鎌倉市議会の議事録は、市のホームページで公開されています議会の詳しいやり取りに興味がある方は、ぜひご覧ください!https://www.kensakusystem.jp/kamakura-vod/index.html※NIHOでは、会員の皆さまの取り組みを地域に共有し、街をより深く知るきっかけをつくることを目指しています。本記事は、市民理解を広げるための情報紹介であり、特定の政党・政治活動を支持する意図はありません。会員の皆様の活動を公平に紹介していく予定です。※写真は掲載者(加藤ちかさん・鎌倉市様など)から許可をいただいて掲載しています。